ここ、瀬戸内町では、先祖をとても大事にする風習があり、
各家々では、先祖供養を熱心にされている方が多くいらっしゃいます。
その様子を垣間見ることができる、一つの事例が、「お墓」です。
瀬戸内町では、集落や一族ごとに墓所があり、毎月1日と15日は、お墓をお参りしています。
そして、この日の墓所は、お参りに訪れるシマッチュでにぎわいをみせます。
花と線香と水そして、焼酎を持って、自分の家のお墓を拝むのはもちろんですが、
現在、集落に不在の親戚や知人のお墓もお参りします。
シマでは、お墓参りのことを「ハナコウ(花香)」とか、「カクサレ」とも言うそうです。
月に2回もお墓参りに訪れるので、墓所は掃除が行き届き、いつも綺麗。
本土のお寺のように、お墓の管理人がいなくても、シマの墓所はシマッチュによって守られています。
実は、墓参りの日は、上記の1日、15日以外に、旧暦の行事に合わせて行う場合もあります。
旧暦の行事でのお墓参りでは、普段の墓参りとは違い、行事にちなんだ花木を供える集落もあります。
先日のサンガツサンチの日にも、この日にちなんだお花をお墓に供えていました。
サンガツサンチにお供えする花は「白百合」です。
今回、調査した須佐礼集落で、
通りかかった集落の方に聞いてみました。
すると、須佐礼集落では、旧暦の3月は通常の1日にお墓参りをせず、3日の日にお墓参りに行くそうです。
また、昔は、サンガツサンチの日には、家の軒先に「百合」と「蓬葉(よもぎ)」をさしていたそうです。
「今でも百合を家の軒先に挿している家はありますか?」と質問してみると、
「いや~、そんなことするのはウッチュ(年配の方々)だけよ~。最近は、見ないね~」
と、おっしゃっていました。
隊長鼎は、サンガツサンチの日に、清水集落~嘉鉄集落~伊須集落と見て回りましたが、白百合をお供えしているお墓が多数ありました。
なぜ白百合なのかは、わかりませんが、瀬戸内町誌にも、「家の軒に白百合の花を挿す」とあります。
ちょうどこの時期、山には野百合が満開。
昔は季節の野の花や木を、先祖のために手折って、お供えしたのでしょう。
先祖を思い、敬う気持ち。
集落に伝わる行事や伝承もそうですが、いつまでも繋げていって欲しい、シマの宝です。
<参考文献>
・「 瀬戸内町誌 (民俗編) 」 瀬戸内町町編集筆委員会
・「 改訂名瀬市誌3巻 民俗編 」 改訂名瀬市誌編纂委員会
2013.4.12-14 瀬戸内町 清水 伊須 須佐礼
S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会) 隊長鼎
鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内