瀬戸内町の冬ならではの楽しみホエールウォッチングと、
請島にある大山ミヨチョン岳トレッキングに行ってきました。
今回も、瀬戸内町役場まちづくり観光課主催の
第5回 島案内人育成講座に同行させていただき、請島周辺の勉強です。
(第4回の様子はこちら→与路島 http://higyajiman.amamin.jp/e311256.html )
案内を務めてくださったのは、町内でガイド業を営む3名のかたがた。
「ホエールウォッチング」を
ダイビング&ペンション RIKI 濱地武之さん、アクアダイブ コホロ 太田健二郎さん。
「請島 大山ミヨチョン岳トレッキング」は
スローガイド奄美 富岡紀三さん。
▲左より役場のかた、太田さん、濱地さん、富岡さん、そして島案内人育成講座受講生のみなさん。
瀬戸内町では、ホエールウォッチングを冬の観光資源として活かしていこうと、
町内のダイビン業者などが協力して、「カケロマホエールプロジェクト」を発足。
大島海峡周辺で見られるクジラ・イルカの調査や情報発信をしながら、
ウォッチングの体制を整えていこうと活動しています。
昨年11月には、瀬戸内町で「シンポジウム 奄美のイルカ・クジラ」も開催され、
町内での意識も少しずつ高まってきている感じがします。
カケロマホエールプロジェクトのブログでも
目撃情報が頻繁に更新されているので、
この日も「目の前で大きなクジラが見られるかも!」と期待ふくらませ、
まずは午前中のホエールウォッチングに出発!
受講生は2つの船に分乗しました。
別のポイントで探すことによって、よりクジラに出会う確率も高まります。
広報Kは、1班 コホロ太田さんのガイドで皆津崎沖へ、
現場監督Mは、2班 RIKI濱地さんのガイドで徳浜~請島近くジャナレ島沖へ。
まずはクジラの生態などについていろいろとお話を伺いつつ、
みんなでさまざまな方向を見て探します。
奄美大島でホエールウォッチングしやすい時期は、1月~4月上旬頃まで。
・見られるクジラの種類は、ザトウクジラ
・大きさは13~14m。体重は30トン、雌のほうが一回り大きい
かつての捕鯨で数は激減しましたが、1966年に捕鯨が禁止されて以降、
年々数は増加傾向。最近の推定個体数は15,000頭~。
奄美大島へくるザトウクジラは、
6~11月ごろまで北太平洋(オホーツク海、アリューシャン列島周辺、アラスカなど)でたっぷりと餌を食べ、
秋になると交尾・出産・子育てなど繁殖を目的に、奄美大島や沖縄などに南下。
繁殖海域では原則的に餌は食べないと言われ、
北太平洋へ戻る時には体重の3分の1が減るそう。
皆津崎沖に着き、近くにクジラがいるかどうか確かめるために、
太田さんが、海中にマイクを投入。
すると鳴き声のような不思議な音が聞こえてきました。
これはなんとザトウクジラが歌っている”ホエールソング”。
これには一同感動!!
自分たちの船の近くにクジラがいるんだと分かり、みんなのテンションも一気に高まります。
このホエールソングは、まだ研究段階で謎の多い歌だそうですが、
繁殖シーズンに歌われることから、
オスからメスへの求愛をしめす「クジラのラブソング」とも言われているとのこと。
また、自分の大きさや存在、強さなどをライバルに知らせるためだとも考えられています。
歌にはいくつかのフレーズで構成される主題が存在。
よく聞いていると同じ歌を何度も繰り返し歌っているのが分かるそうです。
最近の研究発表では、「今年のヒットソング」や「流行遅れの曲」(!!)などもあるとか。
冬に潜りに来るダイバーは、海の中で体中に響くこの「クジラのラブソング」の虜になるかたも多いそうです。
ロマンチックですね~。
加計呂麻島の北東端から外洋に出て、徳浜の手前で見えてくるヒヨコ岩。
ヒヨコに見えます?
このヒヨコ岩を反対側から見たところ。「見返り猫」にも見えると言う人も
広報Kが乗った1班の船では、ホエールソングは聞こえるものの、
なかなかクジラが海面に登場してくれません。
なんとか見つけたいと、みんなあちこちを見渡します。
クジラを探す方法として、
まずは海面にあがっている飛沫がないかをチェックして見るといいとのこと。
この飛沫は、ブロー(潮吹き)と呼ばれ、
クジラが息継ぎのために海面に数回現れます。
その次に頻繁に見られるのが、息継ぎの後に
深く潜ろうとして尾ひれが上がるフルークアップ。
これがいったん見えるとクジラは深く潜り、
平均して5~10分程度潜っているそうです。
海面に何か変化がないか、みんな目を凝らして見ていますが、なかなか現れません・・。
そこで、もう一隻のほうに様子を携帯電話でうかがってみると、
なんと請島近くでクジラが出たとのこと!!
われわれもそちらへ向かってる途中、
船長さんと、ガイドの太田さんがクジラを発見!
一同のテンションも一気にアップ!
みんなで次に現れるであろう方向をじーっと見つめます。
すると出ましたーーー!!
みんなの大歓声のなか、見えてるか見えてないか判らないまま
無我夢中でシャッターをきると、
ほんのちょっと尾ひれだけが撮れていました・・・。
ガイドの太田さんによると、どうやらペアだったようです。
この後、クジラは潜水しているため15分程度待ったのですが、なかなか現れず。
トラブルなどもあり、スケジュールが詰まっていたため、
泣く泣くその場を離れ、請島に向かいます。
われわれ1班は、この時の一度のみしか見られませんでした・・・。
*
さて、もうひとつの船はどうだったのでしょうか?
2班の船に乗った現場監督Mから報告です。
* *
現場監督Mが乗船した2班の船の島案内人ガイドをしていただいたのは、
「カケロマホエールプロジェクト」の立ち上げメンバーである
通称リキさん(本名は濱地さん)。
昨年の11月に行われたイルカ・クジラシンポジウムでも講演された方です。
まず、よくクジラがよく見られる加計呂麻島の徳浜沖に移動。
余談ですが、徳浜の東にはライオンにみえるライオン岩がありますが、
反対側からも船なら見ることができます。
海から見ると、背中のまるい座ったブルドックのようですね。
▲ライオン岩ならぬブルドック?岩
さて、徳浜沖についてから回りを見渡すも、なかなかクジラが見つかりません・・。
そこでリキさんが水中マイクを海に入れ、クジラの鳴き声を聞くことに。
▲手釣りみたいですがマイクを投入しているところ
最初はなにも聞こえませんでしたが、移動しながら何度かマイクを入れていくと、
ついにクジラの鳴き声が!
声が小さいので遠くで鳴いているようでしたが、受講生は初めての生の歌声に感動です。
そうこうしているうちに、もう一隻からトラブルの連絡が・・。
請島につくまで1時間以上掛かるので、
クジラを探しに請島の南東(ジャナレ島付近)まで移動することにしました。
請島の東沖について探しまわること数十分、
参加者の1人が「あっ、クジラ!」という一言で、船上は騒然としました。
▲みんなで同じ場所を凝視中
そして第一発見から数分ぐらいで、船の正面でブロウ(潮吹き)が!
今回の第一発見者は、午後のミヨチョン岳トレッキングの講師でもあるスローガイド奄美の富岡さん。
さすが普段から自然の中を歩かれているだけあって、生き物を探す目がいいですね。
観察してると2頭のクジラが、ブロウしているのが見えます。
親子のようで、一頭はかなり小さめです。
▲並走する2頭のザトウクジラ
そのまま距離を保ちながらクジラウオッチングを楽しみました。
ブロウするたびに船の上では歓声があがります。
観察時間は1時間ほどでしたが、ブロウはいっぱいみられました。
また途中にはなんとフルークダウンダイブ(尾を出して潜っていく行動)が2回、
ペダンクルアーチ(背中を丸めて潜る行動)5回ぐらいもみられました。
▲フルークダウンダイブ
▲ペダンクルアーチ
さらには、2度ほど子鯨によるブリーチ(水面上に体を出してひねり水面に落ちる行動)
と思われる行動も見られましたよ!
▲ブリーチの練習らしきものの着水中
▲水しぶき
本当に感動です。なかなか飛んだ瞬間を写真にはおさめることができませんでしたが、
時間が押してきたのでクジラの海域を離れることに。
みな大満足で午後の大山散策のため請島に向いました。
請島に着くと、池地集落の方々が迎えてくださいました。
池地集落区長の益岡さん、元区長の福島さん、民宿みなみの息子さん、
3名の案内で公民館へ。
もう1隻の船が、遅れて着くというので、
先についた2班メンバー全員で昼食の準備をして待っていました。
* *
1班もだいぶ遅れて、請島に到着。
右上に見えるのが、午後から登る大山(おおやま)です。
だいぶ高いですね~。
請島の池地集落までは、
瀬戸内町の古仁屋港から町営定期船せとなみで行くと、約55分。
昼食は、鶏飯!
受講生のひとりで、食育アドバイザー・フードコーディネーターの資格を持つ
太田美乃里さんが作ってくれたもの。
太田さんは、現在開催中の「あまみシマ博覧会」で
天然酵母のパン作りのガイドを務めていらっしゃいました(メニューはすでに終了)。
みなさん、思い思いに盛りつけて。
なんと鶏飯だけでなく、
舟焼きとシフォンケーキの手作りデザートも。
旬のタンカンも並び大満足。
午前中はずっと船上にいたので、
冷えた体を鶏飯のスープが温めてくれました。
請島の池地区長の益岡正人さんから、
集落についてのお話をうかがいました。
請島は、人口131人(平成25年1月末現在)。
この時うかがっていた公民館のある池地集落は71人。
もう一つの集落は、請阿室(うけあむろ)で60人が住んでいます。
集落の97~98%は年金生活のかたとのことですが、
畜産やソテツ栽培、電照菊などの生産が盛ん。
請島に唯一つ学校・池地小中学校、
郵便局などもあります。
池地の集落近くにある請島最高峰の大山(398m)には、
固有種の「ウケユリ」が自生し、「ウケジママルバネクワガタ」も生息。
どちらも町の天然記念物に指定されており、採集は禁止されています。
集落では、ボランティアグループ「みのり会」を結成し、
ウケユリの乱獲防止や保護、大山の案内などにも取り組んでいます。
今回は残念ながら
集落の中をゆっくり散策する時間がなかったのですが、
またゆっくりと見て回りたいと思います。
*
ホエールウォッチングに関しては、
近々ウォッチング自主ルールを策定し、
奄美クジラ・イルカ協会の体制を整えようとしている段階だそう。
現在でも、町内ダイビング業者いくつかホエールウォッチングに対応しているところがあります。
「カケロマホエールプロジェクト」のブログなどで活動の様子が分かります。
・http://whalewatch.exblog.jp/
【 ホエールウォッチングの問合せ 】
・ダイビング&ペンション RIKI 濱地武之さん
・アクアダイブ コホロ 太田健二郎さん
瀬戸内町の冬の観光定番として、
気軽にホエールウォッチングが楽しめる日も、
そう遠くはないかもしれませんね。
* *
午後の、大山ミヨチョン岳トレッキングへと続く。
2013.2.7 瀬戸内町 請島周辺・池地集落
S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会) 現場監督M ・広報K
鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内