先日、S.B.Iのマチ博士に、図書館職員のFさんより面白い情報が入りました。
それはFさんの親戚が瀬戸内町の古志(こし)集落で
”古志ダイコン”なるものを作っているとのこと。
古志ダイコン、現在市場で見かけることはありません。
この古志ダイコンは普通のダイコンと違い、
表面には色がついているという情報も。
奄美で地域ブランドとして有名なダイコンといえば、
奄美市名瀬の有良(ありら)集落で作っている「アッタドコネ(有良大根)」があります。
なんと南部にもこんなダイコンがあったんだ!ということで、
マチ博士、隊長&現場監督で調査に行きました。
*
古志部落誌『古さとを語る』に古志ダイコンの記載があります。
古志は昔から農業が盛んで、
戦前は「古志ダイコン」が高く評価されていたようです。
古志ダイコンを定期船で古仁屋に持って行くと、
荷揚げする間もなく仲買商人が船に乗り込んで
その場でセリ合が始まるほどだったと書かれています。
また古志ダイコンのことを「先ず味がよい、色彩もよくやわらかい」ともありました。
色がついているというところが今回の情報と一致しますね。
* *
それはぜひ見たい!ということで、
Fさんより紹介してもらい、噂の古志ダイコンを作られているお宅へ向かいました。
ダイコンを作られているおばあさんの娘さんの案内で畑に行くと、
そこには、遠くから見ても確かに不思議な色をした普通でないダイコンが!
近くに寄ってみると、まさに赤紫のダイコンではありませんか!
はしゃいでいると、実際に畑をやっているおばあさんがやってこられました。
お話を聞くと、現在は80代ですが、300坪の畑を一人で管理されているのだとか!
畑の野菜はみんな元気で活き活きとしています。
この古志ダイコンを作っているおばあさんから話をうかがい、ダイコンを観察してみました。
特徴として
・色がつくのは地上に出ている部分の表面のみ。ダイコンの中身と土中は白色。
・普通のダイコンに比べて葉の色が濃い。さらに茎の部分にもうっすらと紫色が入っている。
・昔の古志ダイコンはもっと細長くて濃い紫色だったが、最近は色が薄くなってしまった。
これはタナグリしたため。(タナグリとは他のダイコンの花と受粉して混ざり交配していくという意味だそうです)
・以前、他の集落の人に種を分けたが、そこでは植えたダイコンに色がつかなかった。
使い方としては
・切り干しがいい。
・種がいっぱいできるので、毎年一区画残して種を取り、翌年種をまいて葉が出たところで収穫することが多い。
とのことでした。
お話を聞いた後にひとつお願いしたら、快く古志ダイコンを分けていただけました。
なかなか食べることができないので、いくつかの料理にしてみました。
普通のダイコンと古志ダイコンです。こうやって並べるとやっぱり違いますね。
古志ダイコン(下)と、普通のダイコン(上)
おばあさん曰く、「既に時期が過ぎて花が咲きそうなので皮が硬いかも、
皮を厚めにむいて食べてね」ということでした。皮をむくとぱっと見は普通のダイコンですね。
< 作った料理 >
◎焼き魚と大根おろし (隊長談)
「ダイコンをすりおろすと収穫したばかりからか、すごくみずみずしい大根おろしができました。使ったのは先端の方ですが、苦味はなくピリッとした辛味がありました。焼き魚と合いますね。またおソバにも合いそうです」。
◎切り干し大根 (隊長談)
ダイコンを切った直後、短冊状に切り、ロープにかけて干します。
4日も経つといい感じにしおれています。
5日後にはほぼ完成。割いてバラバラにしました。
「さすがに皮を向いて作ると見た目は普通の切り干しですね。
できた切り干しダイコンを、水に戻し他の野菜と煮付けてみました。
食感が普通の切り干しより弾力が有るような感じでしたね」。
◎生でそのままかじる (現場監督)
「とりあえず薄く輪切りして生でかじってみました。
皮が赤い上部と先端の方を両方かじってみましたが、普通のダイコンより辛味とアクが少ないような気がします。もう少し早い時期なら生でかじることも可能では?というような味です」。
◎水炊き (現場監督)
「大きめに輪切りして昆布と与路の塩でシンプルに炊いてみました。
皮をむかずに炊いたところ、赤色がほとんど抜けて、見た目は普通のダイコンのようです。
味は、一緒に炊いた普通のダイコンと大きくは変わる感じがありませんでしたが、普通に美味しかったですー。
ただちょっと残念なのが、もうすぐ花の咲く時期で、食べるにはちょっと遅いことから、かなり固くなっていました」。
最後に
「平成17年度 国土交通省 奄美群島生物資源の産業化・ネットワーク化調査」
http://www.amami.or.jp/kouiki/seibutsusigen/detail_vegit/vegit_detail_21.html
に古志ダイコンの記載がありました。
ここでは「耐暑、耐病性が強く、早まきでもウイルス罹病症状が発生したことがないという」と書かれています。
大根に関しては、アッタドコネと古志ダイコンの2つしか取り上げられていないので、
地域限定の珍しい品種だったと思われます。
ただ、一般的に古仁屋などに出回っていたのは戦前の話のようで、
残念ながら、どの時代からこの赤いダイコンが入ったかわかりませんでした。
品種としては、現在一般的に出まわっている赤大根の紫色のにすごく似てますね。
今回、ダイコンを作られているおばあさんから、
「種ができたら置いておくからね」と言っていただけました。
赤くなるかはわかりませんが、
種をもらったら図書館の庭で体験的に作れればと思います!
現場監督 M
< 参考文献 >
・『古志部落誌 古さとを語る』 瀬戸内町教育委員会(昭和55年発行)
2013.01.11 瀬戸内町 古志
S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会)
鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内