瀬戸内町文化遺産活用実行委員会では、 「油井集落・豊年祭」の取材を行わせていただきました。
実をいうと豊年祭当日は、準備段階からお邪魔させていただいていました。
油井集落・豊年祭の「準備風景」も豊年祭自体に負けず劣らず見ごたえあり!ですので、ここでちょっとご紹介。
豊年祭当日。
朝、8時前にはちから飯用の炊飯作業が始まっていました。
油井集落のちから飯は、なんと釜炊き!!!
美味しいわけです。
普段見ることのないダイバン・ミシゲ(大きなしゃもじ)!
これは大変な力仕事ですね。
薪のパチパチはぜる音と炊きたてご飯の良い香り。
なんだか懐かしい気持ちになります。
ご飯はサンバラ(竹製ざる)に入れられ、まずは2皿分の握り飯が作られます。
この握り飯は、イビガナシ用とのこと。
「1番炊きのご飯のお初は神様用なのよ」と教えていただきました。
みなさん、炊きたてご飯をものともせず和気あいあいと握っていきます。
手仕事の美しさ。
まんまるい握り飯がどんどん出来上がっていきます。
ちから飯用の握り飯は「固め」に握るのだそうです。
「あげ~、なんちがゆうかい。鍋底の焦げたご飯よ~。食べんね~」と、お焦げの握り飯をいただきました!
次のご飯が炊けるまで、皆さんお焦げ握り飯で、小休憩。
ちから飯用のご飯が炊き終わると、次は赤飯が炊かれていました。
赤飯にはなんと油井の稲作で収穫したもち米が使われています。
みんなで苗植えから脱穀までしたもち米です。
こちらもまん丸の握り飯となって、敬老者を中心に振る舞われました。
そして、公民館の中ではご馳走作りが終盤戦に入っていました。
出来上がった料理を一品ずつお皿に盛りつけていきます。
どれもおいしそう!
この品数と量に驚きます。
集落のご婦人方が作る料理が何よりのご馳走ですね。
敬老者へは茶菓子の振る舞いも。
お菓子の下にひく半紙の折り方も、集落によって違いがあるようです。
一方、公民館裏手の川沿いではサンダンカの花の準備が始まっていました。
このように、1花ずつ洗い汚れを取り除いていきます。
ちから飯にさしやすいよう茎の部分を切りそろえていくんですね。
子供たちもお手伝い。
「かわいいでしょ~」と、にっこり笑顔のご婦人。
かわいすぎます!
出来上がった握り飯は餅箱やサンバラに入れられ冷めるのを待ちます。
その後、一個ずつラップを巻き、サンダンカの花を握り飯にさしていきます。
「ちから飯」の完成です。
そして、初炊きのお米で作られた「ちから飯」は・・・
ミャー(前庭、広場)に祀られているイビガナシにお酒や榊と共にお供えします。
イビガナシは集落の守り神。
集落の代表者・区長さんにより豊年祭の安全祈願が行われます。
そして、公民館山手側に祀られている「墓所」へも、「ちから飯」はお供えされます。
区長さんによると、このお墓は「イブシロシンオウ」という実在の人物の墓なのだそうです。
「イブシロシンオウ」は非常に仁徳があり、力持ち。
勝負事に強く、集落の人たちから慕われていたそうです。
現在でも豊年祭・当日には、ちから飯とお酒などを供え、必勝祈願・安全祈願をしています。
「イブシロシンオウ」は油井集落の必勝と安全の守り神、なんですね。
油井の「ちから飯」を彩るサンダンカの花。
鮮やかな橙色が眼に飛び込んできますね。
油井の豊年踊りでは「ちから飯」の演目があります。
その演目では、力士たちが土俵中央に集まり、「ちから飯」を頭上高く掲げ踊ります。
区長さんのお話では、この踊りは油井集落の「団結」を表しているそうです。
小さい花が集まった「サンダンカ」の花は、油井集落の団結力の象徴なのかもしれないですね。
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炊飯が終わった釜は、お茶用のお湯を沸かすため豊年祭の間中使用されます。
「石を三つ入れて沸かすのが、昔からの習わし。なんでかいね~」、あるご婦人がにこやかに答えてくれました。
使用される石は「川石」でなければならないそうです。
「先人からの教えを大切にする心」
大切に後世に伝えていってほしいですね。
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水屋仕事はつつがなく終わりました。
次は、豊年祭の「綱かき」に続きます。
瀬戸内町・油井集落
S.B.I 調査員 S.K
2013.10.15