9月14日。
加計呂麻島の西阿室集落へ行ってきました。
西阿室集落は人口105人,世帯数63(平成25年9月14日現在)
加計呂麻島にある30集落のうち,2番目に大きな集落です。
S.B.Iでは以前「西阿室 十五夜豊年祭」の取材をさせていただいています。
この日は瀬戸内町が主催する「島案内人講座」に同行させていただきました。
「島案内人講座」については過去記事をご覧ください→須子茂集落散策 芝集落散策
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まずは海上タクシーで加計呂真島・瀬相港へ向かいます。
およそ30分の船旅もまた,瀬戸内町ならではです。
港に到着後は加計呂麻バスで,いざ西阿室集落へ。
マイカー所有率の高いシマッチュにとって,マイクロバスに乗るのはめったにないこと。新鮮,新鮮!
ガイドの方の説明を聞きながら,学生時代の遠足を思い出したり。
今回のガイド役は池田さんと籾山さん。
お二人は島案内人講座の認定試験に合格され,「島案内人」に認定された方々です。
まずは西阿室小学校近く,サト地区のミャー跡に集合。
午前中は集落散策
午後からはシマの遺跡についての講義と,土器などの遺物拾いです。
用意していただいた西阿室集落についての資料をもとに,案内スタートです。
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こちらはカミヤド
カミヤドとは「神様が滞在する家」のこと。
サト地区のトネヤにお連れした神様は,西俣家に滞在したと言われているそうです。
カミヤドから続く道を歩くと,厳島神社へとつながります。
階段を登り切ると狛犬がお出迎え。
厳島神社の縁起(由来)は江戸時代末期に遡るそう。
神社のなかった集落に広島から移住した伊東義右衛門が伊東家の屋敷神として,広島の厳島神社より分祀したのが始まりと言われています。旧暦の9月9日と大晦日に例祭が執り行われるそうです。
厳島神社を後にし,集落の道を歩いていきます。
巨大な一枚岩が道にせり出していたり,壺・甕が無造作に転がっていたり。
門柱に置かれたシャコガイや,ハブ除けの用心棒,ハイビスカスにサルスベリの花。
次の目的地までの道のりも,楽しい発見の連続です。
伊東義尚旧邸
伊東義尚氏は神奈川県鎌倉群長を務めた後,奄美へ帰郷。
1929年に名瀬町長に就任すると名瀬のみならず奄美振興のため,国の役人と折衝を重ねました。
その熱意が国と県を動かし,現在の奄美群島振興開発計画のモデルとなる事業樹立に至ったそう。
奄美振興の父は伊東氏だったんですね。
続いて,金久(かねく)組・お花製作所を見学。
みなさん,作業の真っ最中。
この花飾りは豊年祭中最も華やかな「テンテン踊り」の演目で,先頭を切る力士たちが掲げ入場する時に用います。
別の部屋でもお花作りをしていました。
山椿の枝に一輪一輪,造花を結んでいくそうです!
山椿の切りだしは男性が,花飾り作りは女性が担当。
山椿の枝に竹で作った格子を取り付け、そこに造花を結んでいきます。
シマのOGたちが傍でご指導されていました。
集落の行事にかかわるひとつひとつの作業は,口伝がほとんど。
今も昔もこうして連綿と語り継がれてきたんですね。
「今年は復帰60周年ということで,特別に「60」も作ったのよ~」と見せていただきました。
この花飾りで用いられるのは丈夫な「パーチメント紙」という紙。
豊年祭後,綺麗な造花は翌年の豊年祭でも使うそうです。
お花製作所の次は秋葉神社へ。
秋葉神社は集落の西側,アコウヤマの中腹斜面に立てられた神社。
ハイビスカス咲くスロープ状の沿道を登った先にありました。
秋葉神社では火の神様を祀っているそうです。
石塔が黄色っぽいですね。
これは鹿児島県本土の山川町で産出される,「山川石」で作られたもの。
山川石製の石塔は由緒ある家の墓石などに用いられていました。
この日の秋葉神社からの眺望は,本当に素晴らしかった!
写真中央に見えるのは,ハミャ島です。与路島も少し見えました!
暑い中,急こう配を息を切らして昇った甲斐がありましたね。
秋葉神社を降り,海岸近くのガジュマルで皆さん,小休憩。
ここはカネク地区のミャー跡。
西阿室集落では,集落内の各ポイントでガジュマルの木がお出迎えしてくれます。
港に集まった皆さん。なぜかというと・・・
時々、亀がやってくるそう!
この日は生憎、会えませんでした。残念!
確かこの辺りにイベ石があったはず。
資料を見ながら探していると・・・
「ここ、ここ!」
もう一人のガイド,禱さんからイベ石の説明をしていただきました。
なんとイベ石は花壇の花の後ろに,鎮座していました。
見つけられないわけですね。
続いて,シューハマへ。
サト地区にあった土俵は,大正初期にシューハマへ移動したそうです。
現在,豊年祭はシューハマで執り行われています。
ちょうど,この日は豊年祭・準備の真っ最中。
翌日に豊年祭を控え,青壮年団を中心に会場設営が行われていました。
これはシバヤと呼ばれています。
豊年祭を見物する方たちの見物小屋のようなもの。
主に椎の木を使っているそうです。
集落の方から,ジュースをいただきつつ(ありがとうございました!),
西阿室集落の豊年祭について,ガイドさんよりお話をしていただきました。
(豊年祭の様子は,過去記事をご覧ください。 → 「西阿室 十五夜豊年祭」)
シューハマ近くの商店。
町の商店とは違う,この独特の雰囲気!
なんだか懐かしくなりますね。
西阿室集落には加計呂麻島唯一の教会があります。
現在,信者は4家族6名なのだそうです。(平成25年9月現在)
教会内部はこんな様子。
中に足を一歩踏み入れると,静かな空気が流れていました。
国内に4体しかないマリア観音像を見せていただきました。
教会では毎週土曜日に古仁屋から神父さんが来島し,ミサが行われているそうです。
教会を後にし,サト組のお花製作所・公民館へ向かうと,花飾りは完成していました。
カネク組とサト組で花飾りの様子が違いますね。
毎年デザインを変え,各組でその華やかさを競っているそうですよ。
集落散策を終え,島案内人講座の楽しみの一つ,ランチタイムです。
ランチは西阿室小学校・校庭でいただきました。
午前中,ずっと歩いていたので,みなさんお疲れモードです。
今回のお弁当は伊子茂集落の 「海宿5マイル」 さんのもの。
〈メニュー〉
新鮮地魚のフライ(特製タルタル)
自家製ジーマミ豆腐の揚げ出し
夜光貝のバター炒め
炊きたてご飯に酒粕味噌
パパイヤの漬物
シマの豊かな食材を生かした品々に,皆さん舌鼓を打っていましたよ。
特に驚いたのが,夜光貝のバター炒め!
あんなにやわらかい夜光貝は初めて食べました。
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午後からは鼎隊長による「シマの遺跡について」の座学でした。
「ここ試験に出すかも・・・しれませんよ~」と鼎隊長が言ったところを書き出す受講生の方。
皆さん,本当に熱心です。
鼎隊長が持参したものは,西阿室集落で以前拾った遺物です。
皆さん,考古資料は普段の生活では中々見ることができないと思っていませんか?
でも,実はとても身近にあるんです。
地面を掘らなくても,地面に落ちているんですよ!
実際にどんな遺物が拾えたのか,皆さん興味津々で手に取って見ていました。
さぁ,講義終了後は実際に遺物を拾ってみましょう!
サト地区のミャー跡で遺物探しです。
皆さん,地面とにらめっこ。
「これは何?」「これはいつの時代の?」と質問が飛び交います。
今回、皆さんが拾った遺物の中に土器はありませんでした(鼎隊長残念!)
そのため,今回は鼎隊長に代わり,私が拾った遺物について説明をさせていただきました(緊張しました・・・)。
今回拾った遺物の中で一番古い遺物はカムィヤキの破片でした。
カムィヤキは徳之島で11世紀~14世紀にかけ,作られた無釉陶器です。
その他にも中国製の陶磁器や薩摩焼(鹿児島),壺屋焼(沖縄),肥前系陶磁器などがありました。
ほんの10分くらいの時間でしたが,皆さんたくさんの遺物を拾っていました。
遺物からその集落の歴史に触れるのも,楽しいものですよ。
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西阿室集落・秋葉神社からの眺望。
整然と並んだ家々とシマの細い道。
そして,シマの風景には欠かせない青く澄んだ海。
自然の素晴らしさだけでなく,
そこに住む人たちの日々の営みに触れると,
また少し,シマの魅力を再発見できるかもしれませんね。
来年はあなたも是非,島案内人講座へ参加してみませんか?
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〈参考文献〉
「まんでぃ」 瀬戸内町役場まちづくり観光課
「瀬戸内町誌 歴史編」
「奄美 加計呂麻島のノロ祭祀」 松原武実
瀬戸内町・西阿室集落
S.B.I 調査員 S.K
2013.11.25