梅雨に咲く花の代表格「ゲットウ(月桃)」のサマリ(要点)
梅雨時期の花として、紹介しました「ゲットウ=サネン」の仲間を、
もう一度 ちょっこと詳しくご紹介。
「ゲットウ」
方言名:サネン、サニン、サニ、サヌイン、サンニン、マームチハサー、ムチガシャなど
多年性常緑草本で、茎が直立して、高さは1.5~3mになります。
佐多岬を北限とする、南方系の植物です。
葉は、長さ40~70cm、幅10cm前後で、先端がとがった楕円状をしています。
両面ともになめらかで、縁(ふち)には白色の細い毛があります。
光沢があり、厚みのある葉には特有の香気があるので、餅やおにぎりの包装に使われました。
殺菌効果もあり、香りだけでない実用的な面もあります。
5~6月、茎の先端から紡錘状の変形葉が出て、押し出されるように30~40個のつぼみが現れます。
つぼみは、白色で先端が紅ぼかし。まるで瀬戸物(せともの)のような光沢です。
以前は、少女達がほおずきの代用品として、このつぼみを噛んでいたことも。
※ほおずき(鬼灯)の中身を取って、口の中に入れて噛む遊び。
子供が口にして鳴らす頬の様子から、「頬突き」 と名付けられたとも言われています
花の大きさは約5cm。
おしべが変形して、ほら貝のような形になっています。
外面は、黄色で中は燃えるような赤色です。
実は、つぼみの中には2つの花があり、1つは咲かない(写真、真ん中)で終わるらしいです。
園芸変種に、フイリゲットウ(斑入り月桃)があります。
葉がまだら模様(斑入り)なので、花がなくても観賞用として楽しめます。
「クマタケラン」
方言名:サネン、サヌイン、シャネン、オンサネン、ホンサネン、カサ、カシャ、ムチガサ、ムチガシャ、ムチサネンなど
多年性常緑草本で、茎が直立して、高さは1~2.5mほど。ゲットウより少し低いです。
葉は、先端がとがった楕円状をしています。
長さ50~70cm、幅8~15cm前後で、ゲットウより葉が広く軟らかいのが特徴です。
方言名からもわかるように、餅や団子を包むのに使われていて、
シマでは、クマタケランの方がゲットウよりも、よく利用されます(サンガツサンチのフティムチはこちら)
以前は、茎をたたいて縄を作ったり、もっこ(運搬道具)の材料にも使われていたそうです。
花のつき方は、ゲットウのように垂れ下がらずに、上に伸びていきます。
花は、小ぶりで約3.5cm。色合いは、ゲットウよりも淡いです。
こちらも、つぼみの中に2つの花がありました。1つは、咲いていません。
山の中で見かける、よく似た植物は、「アオノクマタケラン」といいます。
クマタケランに似ていますが、かなり小型で高さは約1~1.5mです。
方言名は、クスザネン…
利用されることがないので、ありがたくない名前が付いたようです。
アオノクマタケランとゲットウを掛け合わせて作られたのが、
クマタケランだとも言われています。
シマの生活に深く密着してきた、ゲットウとクマタケラン。
長年、島の植物を調べてこられた、大野隼夫先生は、著書にこう書き記されています。
特にゲットウとクマタケランについてはその効用を活かすべきであろう
特産の餅や菓子の包装、料理の盛り付けや仕切りなど、
郷土の個性を活かすという面から昔の人々の生活の知恵を、
もう一度見直すべきではないだろうか。
近年、食べ物の包装としてだけでなく、化粧品などにも利用されているゲットウ
雨を受けて艶を増す、ゲットウの花を眺めながら、
昔の人の知恵を、もう一度、見直してみるのもいいですね。
< 参考文献 >
・『 琉球弧・野山の花 from AMAMI 』 片野田逸朗著 大野照好監修
・『 奄美の四季と植物考 』 大野隼夫著
・『 奄美群島植物方言集 』 大野隼夫著
2013.5.29 瀬戸内町
S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会) 隊長鼎
鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内