平成26年10月2日(水)は、旧暦9月9日
加計呂麻島の諸数集落は、伝統行事『クガツクンチ』のために、『ミキ』を手作りしている数少ない集落です。
今回の『諸数のミキ作り』レポートを、諸数在住の須崎まさこさんに紹介していただきます。
* * *
奄美大島の昔から続けてられる年中行事の中に、
旧暦9月9日(クガツクンチ)があります。
旧暦9月9日には、各集落(地)の守護神(産土神)を参拝するのですが、
その際に「ミキ」をお供えします。
ミキの作り方は、各集落でも違うそうなのですが、
私の住んでいる加計呂麻島の『諸数集落』では、
現在でも集落の婦人たちが集まり、ミキ作りが行われています。
今回は、諸数の『ミキ作り』をご紹介します。
“ミキは、発酵飲料なので二晩寝かせる”と言うのが、昔からの習わしだそうです。
今年は、10月2日水曜日が旧暦9月9日にあたります。
この日に合わせて、9月30日の午前中にミキ作りが始まりました。
【其の一】
諸数では、朝できたてのお粥を持って集会所に集まることから始まります。
持ち寄ったお粥を、ひとつの大きな鍋に移します。
【其のニ】
お粥の中に分量の白糖を入れる。
【其の三】
お粥があたたかいので、すぐ溶けるので、よく交ぜてなじませる。
【其の四】
分量のサツマイモを薄くスライスして水でさらす。
ザルにとって水を切っておく。
サツマイモは、発酵させるために使うのですが、
この時期の気温などによって分量を調整したりしてるそうです。
涼しければ、サツマイモの量を増やし、発酵を促進させると言った感じですね。
【其の五】
水を切ったサツマイモをミキサーにかける。
【其の六】
ミキサーにかけたサツマイモの汁をお粥の中に投入してよく交ぜる。
【其の七】
全て合わせたお粥を少しづつミキサーにかける。
【其の八】
ミキサーにかけたものをザルで裏ごしする。
【其の九】
全てのお粥の裏ごしが終わったら、最後によく交ぜておく。
これで下ごしらえは終了。
【其の十】
ミキを瓶に移します。とてもなめらかでキレイな乳白色です。
【其の十一】
瓶の蓋には、バシャの葉(バナナの葉)を使います。
【其の十二】
バシャの葉をとめておくのには、藁で左巻きに編んだ縄を使います。
ミキ作りをしている間、敬老の婆ちゃん達が縄を編んでくれます。
神様にお供えする物には全て“左巻き”の縄を使うそうです。
相撲の土俵に使われている、太い縄も左巻きとの事。
これで準備は完了です。
【其の十三】
集落の祠で、二晩寝かせながらのお清め。
旧暦9月9日を待ちます。
* * *
さてここからは、10月2日(旧暦9月9日)のミキをお届けします。
当日の朝から、集落は大忙しです。
朝7時には、男の人達は集落清掃と土俵を整え、女の人達は力飯をつくります。
作業が終わってから、いよいよミキを開けます。
出来栄えはいかに?
縄をほどき、バシャの葉をとると、キレイに発酵して膨らんでました。
少し涼しかったこともあって、もう少し発酵して酸っぱくなっても良かったみたいです。
開けたミキは祠の前で、取り分けて頂きました。
この後は、集落の青年・壮年と産土神にお参りし、ミキをお供えしてきました。
この後は旧暦9月9日を祝い、
朝作った力飯を青年が土俵でお清めして、宴会が始まります。
諸数集落住民が集って続けられている年中行事の一つ
『クガツクンチ』
毎年こうして、
ミキを飲むことから始まり、食事をして語らい、お酒を飲んで、カラオケしたりして楽しみます。
少ない人数ですが、これからもずっと引き継いで続けていきたいですね。
『集落に伝わるミキ作り』をレポートしてみましたが、
昔は、白米も少なかったり、上白糖やミキサーなどの道具もなかったため
芋の分量が多かったり、黒糖を使ったりして作っていたそうです。
その為、粒も残って色のついたミキだったということです。
伝統は続きながら、時代と共に使う食材が変化しているようです。
レポート
諸数在住 須崎まさこ
* * *
島の人々が楽しみにしている行事のひとつでもあるクガツクンチ
同じ日には、諸鈍シバヤや実久三次郎大祭などが行われています。
集落によって、現在もこのように行事が続いていることは、シマの宝、まさにヒギャジマン!
記録をとることで、住むシマの伝統の変化が見えてくることは、面白いことかもしれませんね。
須崎さんレポートありがとうございました。
2014.10.02(旧暦9月9日)
加計呂麻島 諸数集落