11月24日(日)
秋晴れの爽やかな気候の中、芭蕉糸の親子ワークショップが始まりました。
今回のワークショップは、瀬戸内町文化遺産活用実行委員会主催による
平成25年度伝統文化親子体験教室事業「芭蕉の糸とコースターつくり」というものです。
今回は、「芭蕉の糸作り」を親子で楽しく学び、作るワークショップ。
芭蕉といえば、食べるバナナを浮かべる人が多いことでしょう。
実は、芭蕉には実を食べる実芭蕉と幹から繊維を取る糸芭蕉があるのです。
今回の主役は、この糸芭蕉です。
まずは瀬戸内町立 図書館・郷土館 で、ご指導頂く内山先生のお話や今日一日の予定を聞きました。
奄美市名瀬を中心に活動されている「あまみ~るクラブ」代表の内山初美先生は、笑顔がステキで、織物に対する愛情たっぷり。
糸芭蕉に関わられて10年ほどだそうで、ご自分でも芭蕉布を織ったり、沖縄や沖永良部島の工房を訪ねたり、
研究熱心でお話に引き込まれました。
総勢30名ほどの参加者たちは、親子の方や芭蕉に興味のある女性など…
皆さん、ワクワクした表情です。
いざ、芭蕉を倒しに須手へ車移動。
①ウー(苧)剥ぎ
糸芭蕉の根元20㎝より、ノコギリで切ります。
驚くほど、水分たっぷりの芭蕉ちゃん。
この液が洋服に付着すると、染みになりますので、ご注意くださいな。
切ったところから、1メートルの長さに上部も切り落とします。
親子は交代しながら、息を合わせて協力作業。子供でも簡単に切れます。
この糸芭蕉を倒す作業は、10月~2月の寒い時期に行うもので、春から夏の間に芯止めという葉の生えている上部を切り落とす手入れをします。
この手入れをすることにより、花や実や葉に行き渡る栄養を幹に蓄え、上質な糸になるのでしょう。
だいたい3年が、刈り取りに適した時期で、それ以上になると繊維が硬くなるそうです。
さぁー、図書館前庭へ戻り、次の作業です。
倒した糸芭蕉を根元を上に向け、外皮を剥がします。
ここでもったいない精神は必要ありません。これでもかとガシガシ剥きます。キレイな薄緑色になるまで、ドンドン剥きます。
次が肝心な糸となる皮を剥ぐ口割い(くちわい)作業です。
引き続き、根元を上に向け、幅1~1.5㎝にナイフで切り込みを入れ、下まですーっと剥ぎ取ります。
切り込みを入れてから、体を後ろへ倒していくと、キレイに下まで取れるようです。
ここで重要なことは、剥ぎ取った繊維の根元は根元で持っておくこと。
これが、糸になるときに重要です。
この作業は子供たちがハマっていました。
親が糸芭蕉の幹を支え、子供が皮を剥ぐ。
回数を重ねるごとに、上手に剥ぐことが出来るようになり、楽しそうです。
糸芭蕉の繊維は、内側ほど良質で、着物や帯を織る糸になります。
外側はアクセサリーやコサージュなどに用いられています。
いつもは3種類に分けるそうですが、今回は、内側と外側の2種類に分けました。
江戸時代に記された『南島雑話』では、なんと6種類に分けていたそうです。
最後に片手に握れる剥ぎ取った繊維を、少しだけ根元を出して、3つに折り曲げます。
根元から1本取り出し、3つ折りにした部分にクルクル巻き付け、重なり合った部分に挟み込んで完成。
②ウー(苧)炊き
大きな鍋に灰汁を入れ、鍋の縁から反対側の縁までロープを敷いておきます。ロープはひっくり返す際に役立ちます。その上に3つ折りにした外側の糸芭蕉を入れてマキで炊きます。
外側と内側では炊く時間が違います。
硬い外側は沸騰してから10分、ひっくり返して20分。柔らかい内側は沸騰してから10分、ひっくり返して10分。
これはあくまで目安の時間で、その糸芭蕉や灰汁によっても異なるとのことです。
この煮ている時間に、ランチタイム。
気持ちの良いお天気なので、持参したお弁当を広げれば、まるでピクニック。
焼き芋をする焚き火が始まり、子供たちは駆け回り、穏やかな時間です。
おっと、煮えてきたようです。
キラキラ薄ピンクに輝いていた糸芭蕉が渋い黄金色に変化していました。
大きなボールに煮えた糸芭蕉の束が崩れないように引き上げ、
少し煮汁をかけ、糸芭蕉の葉を被せ蒸らします。
今回は糸芭蕉の葉をフタにしましたが、ナイロン袋などでもいいようです。
しばらく蒸らした後、ボールに水を入れ、束を崩さないよう慎重に洗います。
2度ほど洗ったら、今度は水切りです。
穴のあいた容器に糸芭蕉の束を並べ、上に おもし をします。今回は30分ほどの水切りでしたが、
一晩しっかり水切りする工房もあるそうです。
同様に内側も煮て、蒸して、水切りです。
③ウー(苧)挽き
さぁー、クライマックスの作業です。
水切りした糸芭蕉の束を広げ、その中からひと束を取り出し、根の方15㎝ほどの部分を左手で持ち、竹のハサミを右側へ引き、不要物をしごき落とします。
これでもかと、しごき落とします。
ヌチャヌチャした不純物が竹のハサミに残ります。
この不純物はゴミではなく、なんと紙の原料になるのです。
糸芭蕉に捨てるところなし。
キレイに不純物が取れると、少しづつ束がほどけ、糸のようになっていきます。
左手で持っていた部分を逆に持ち替え、根の方15㎝も、竹のハサミでシャーとしごきます。
これをひと束づつ、丁寧に繰り返し行います。
かなり根気のいる作業ですが、参加している方たちと語り語りしながらやると、楽しい作業になりました。
昔はシマ(集落)の協同作業として、糸芭蕉をしていたそうです。
それだけ人手がいるし、手間がかかるし、シマをあげてしないと成り立たなかったのでしょう。
④ウー(苧)うみ
最後に図書館2階へ戻り、はた結びの練習です。この結び方は大島紬と同じです。
不純物を取り除いた糸芭蕉は風通しの良い日陰で乾かし、クルクル巻いてチング巻きにして保存します。
糸にする際は、しばらく水にチング巻きを付け、根を左手に持ち、右手で希望の太さに裂いていきます。
何本か裂いたら、糸の端と、次の糸の根の方をはた結びします。
これで糸芭蕉の糸の完成です。
糸芭蕉には、常に水分が必要なので、糸をうむ時、機織りをする際、必ず水分を与えてあげるそうです。
現在は芭蕉布といえば、沖縄が主流ですが、昔は琉球王国へ奄美大島の芭蕉の糸を輸出していたり、江戸時代の奄美大島の人々は芭蕉布の着物を付けていたり、奄美大島と芭蕉は昔は深い関わりがあったようです。
奄美大島特産の大島紬のベースになったのも、どうやら芭蕉布らしいのです。
そんな興味深いお話も、内山先生から伺い、ますます芭蕉布世界へ引き込まれた一日でした。
次回12月8日は、芭蕉糸でコースターを織ります。皆さんで、トントンしちゃいましょう。
11月24日(日) 瀬戸内町古仁屋
調査員 a.s