2014年2月22日(土)、23日(日)に
平成25年度瀬戸内町文化遺産活用実行委員会講座が行われました。
1日目は「型染め」 → SBI講座「リュウキュウ藍染め体験」(型染め)
2日目となる2月23日(日)は、
「しぼり染め」と「型染め」によって模様をつけたハンカチをリュウキュウ藍で染色しました。
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この日の会場は瀬戸内町・嘉徳集落にある 藍染め「よしかわ工房」 さん。
講師は 吉川好弘先生。
約30年もの間、藍染めに携わってきた職人さんです。
まずはリュウキュウ藍の説明。
リュウキュウ藍はキツネノゴマ科イセハナビ属の多年草。
(本土の藍はタデ科なので、違う種類なんですよ)
リュウキュウ藍は花が咲かないので、「さし木」という方法で増やしていくそうです。
これが【リュウキュウアイ】
生育の北限は北緯30度。
光がまばらにこぼれる半日蔭を好み、山の中の窪地で良く生育するそうです。
奄美では越冬するそうですが、さすがに冬場は葉が小さくなるそう。
現在、よしかわ工房さんでは畑で栽培された藍を使っているそうです。
続いて、藍の染料の作り方について。
藍染めで用いる藍の染料は、微生物の発酵により生み出されます。
収穫した生葉を水につけ不純物を取り去ったあと消石灰を入れ撹拌します。
すると水分と藍の染料が分離し、染料が泥状に沈殿します。
ここまでが1次発酵。
2次発酵では泥状の藍の染料を染料タンクに取り出し、微生物の餌となる水あめ、焼酎を入れ発酵を促します。
500ℓ分の染料タンク1缶分を作るのに、藍の染料100kg、水あめ1kg、焼酎1升が必要なんだとか!
そして、碧(みどり)色の液になるまでじっくり発酵させるそうです。
藍の染料作りは6月中旬頃に始めるそうですよ。
リュウキュウ藍と藍の染料について学んだ後は、しぼり染めについて奥さまからの説明。
タオルを使って、模様の種類や模様ごとの絞り方を教えていただきました。
【しぼり染めの工程】は
①模様を考え、模様に合わせて布を紐で縛る。または布を折った後、紐で縛る
②染色(染色3分、酸化3分を1セット、合計染色回数4回)
③しぼり解き(しぼりは染料が酸化した後に布の紐を解いていく)
④水洗い(余分な染料を落とす)
⑤乾燥
しぼり染めは布を紐で縛り、施文する模様染め。
染色後、紐で縛った部分が白く残り模様となります。
ハンカチをしぼる紐は白とピンクの2色。
紐の色を変えるのは、「しぼり解き」の順番をわかりやすくするためだそう。
染めの回数を追うごとにしぼりを解くと、模様に水色から白へ色の変化が生まれます。
真っ白のハンカチを前に、出来上がりの模様を想像しながら縛っていきます。
どんな模様にするかワクワクドキドキ、楽しみですね。
ハンカチをしぼり終えたら、藍染め開始です。
藍の染料タンク前に並んで順番待ち。
ハンカチには長い紐をつけます。
これは染色しやすく、またハンカチを引き出しやすくする工夫です。
1回目の染色。
まず、染色液にハンカチをひたします。
染色時間は3分間。
ハンカチが染色液を吸うまで少し時間がかかるので、二股の棒を使ってハンカチを沈めていきます。
3分たったらタンクからハンカチを引き上げ、余分な染色液をしぼります。
タンクから取り出したハンカチを台の上へ。
ハンカチのしわをのばし、広げていきます。
藍の染料は空気に触れることで酸化します。
すると、碧色から藍色へ色が変化し、藍本来の色(藍色)に定着するそうです。
染色時間や回数は布の種類や薄さで判断します。
もちろん、藍の染料は生き物。
藍の状態によっても染色時間や回数を変えるそうですよ。
2回目の染色の様子。
「どんなかな~」
思わず覗き込んじゃいますね。
3回目の染色後。
お父さんにハンカチを引き出してもらって・・・
自分の、と思われるハンカチをしぼる子供たち。
子供たちは顔や服、靴に藍の染料を飛ばしつつ勢いよくハンカチをしぼっていました。
こちらは3回目の酸化後、しぼり解きをしています。
2回目の酸化後なら、やや濃い水色
3回目の酸化後なら、水色
4回目の酸化後なら、白
という風に、自分の出したい模様に応じて、酸化後にしぼりを解いていきます。
最後の染色。
ぎゅ~っと絞って。
顔に染料がはねちゃいました。
酸化させた後は、最後のしぼりを解いていきます。
そして、水洗い。
巨大バスタブでじゃぶじゃぶ洗います。
余分な染料を落としていきます。
空を走る飛行機雲のようですね。
水気を切った後は脱水。
中にはこんなものを染色していた人が。
これは芭蕉糸なんだとか!
なんだか髪の毛のようですね・・・
脱水が終わると、外の物干し竿で自然乾燥。
風にはためく皆さんの作品。
しぼり染めと型染めのハンカチです。
それぞれに趣があって見ているだけでも、楽しいですね。
ハンカチが乾くまで、ちびっこたちは広場でおにごっこに興じていました。
自然乾燥後。
作品を見せ合っている方たちもいましたよ。
よしかわ工房さんの藍の色は、とても深い堅牢な藍色。
しぼりの数やしぼる範囲、しぼり解きの回数を変えることで、作り出す模様は無限に広がります。
しぼりを解き、水洗いして初めて自分のハンカチの模様がわかる。
どんな模様ができるのかわからない、そんなワクワク感が「しぼり染め」の魅力だと感じました。
「また、染めたいね~」
そんな声があちこちから聞こえてきました。
最後に皆さんが作った作品を手に、記念撮影!
素敵な作品ができましたね。
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今回の講座では
1日目に「型染め」
2日目に「しぼり染め」とリュウキュウ藍による染色 を行いました。
かつて瀬戸内町の「山郷(ヤマグン)」と呼ばれる地域では、
明治末から大正初期にかけてリュウキュウ藍による染料作りが行われていたそうです。
しかし、現在では自生の藍から作られる藍の染料および藍染めは、嘉徳集落のみで行われています。
今では大変貴重となったリュウキュウ藍による染色体験。
今回の講座ではリュウキュウ藍の特性や、藍の染料を作り出すまでの工程を学ぶことができました。
また、リュウキュウ藍による染色体験を通して、瀬戸内町ならではの染色文化に触れる機会となりました。
ご指導いただいた大内先生、よしかわ工房の吉川さんご夫婦。
貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。
参考文献
「瀬戸内町の文化財をたずねて」(改訂版)
2014.3.17
SBI調査員 S.K